戦い抜くことが美徳とされる日本の価値観
日本では、諦めずに最後まで戦い続けることが美徳とされています。いわゆる最後まで諦めない体育会の価値観です。
こういった価値観が形成される要因の一つは、子供から大人になるまでに多くのゼロサムゲームをやらされるからだと思います。ゼロサムゲームとは誰かが得すると誰かが損するゲームのことです。
例えば、部活動の全国大会の出場枠や、大学受験などでは、限られた枠を取り合わなければなりません。
本来は、自分なりに記録を伸ばしたり、自分にあった大学を見つけたりしてゼロサムゲームではないはずです。
しかし、実際は順位、偏差値という全員が共通の尺度で測られるため、自分なりの価値を見出して戦うことは難しいです。特に試合の勝敗やテストの点数に対して逐一口を出すような両親の影響は大きいかもしれません。
その結果、何としても勝たなければいけない、諦めてはいけないという価値観が形成されていきます。
ここで形成された「勝てなくても戦う」価値観は生涯に渡ってその人の意思決定に影響を与えているでしょう。
戦略は戦術に勝る
人気アニメのコードギアスで主人公のルルーシュが
「戦略が、戦術に負けてたまるか!!」
と叫ぶシーンがあります。
これは、主人公のルルーシュが戦に確実に勝てるよう戦略を立てたにも関わらず、スザクという一体のムチャ強い兵によって、戦局が変えられそうになった際にルルーシュが叫んだセリフです。
漫画やアニメはこういった戦略を覆すようなチートキャラがいます。キングダムの龐煖とかもそうですね。
そもそも、戦略と戦術とは違いとはなんでしょうか。あまり厳密に線引きすると混乱します。
なので、ざっくりと
戦略:出来る限り「戦いを略して」成果を得ようと考える事
戦術:目の前の敵や課題をどうやって倒すか「戦う術」を考える事
と理解したら分かりやすいです。
漫画やアニメと違って、現実では戦術が戦略を覆すこと通常ありません。
大学受験で言うと、それぞれの科目の問題をどうやって解くかよりも、どの大学でどの科目で受けるのほうが重要ということです。
仕事で言うと、一人のスーパー営業マンがどう商品を売るかよりも、誰に対してどんな商品を提供するのかのほうが重要ということです。
目の前の敵や課題をどうやって倒すか(=戦術)よりも、
極力、戦わずに成果を得るためにはどうしたらいいのか(=戦略)考えるほうが優先度は高いのに、つい私たちは戦術レベルにこだわってしまいがちです。
戦わない方が人生はおもしろくなる
私自身も振り返ると、戦わない選択をしたほうがおもしろく、結果が出ることが多かったように思えます。
高校時代にクラス対抗の合唱コンクールのクラス委員をやることになったときの話です。
合唱コンクールなので当然、いかにクラスを団結させて、うまく歌うかの勝負です。
ただ、自分のクラスは練習をさぼる問題児の男子も多かったのでまともな歌の勝負では、勝てないと直感しました。
私の高校の合唱コンクールでは、歌いながら動いたり、小道具を使って演出をしていいユニークな点がありました。そこに目をつけた私は、歌ってる人の前に問題児の男子たちに「陸シンクロ」をやってもらうことにしました(曲はサザンのTSUNAMI)。
波に見立てた低くて長い板の後ろに隠れて、問題児の男子たちがシンクロ風に踊るという前代未聞の取り組みでした。問題児たちもユニークな提案にのってくれました。他のクラスにはないおもしろい取り組みにクラスは団結して、練習にも集中して取り組むことが出来ました。
本番は、参加者の度肝を抜き、たくさんの人に「おもしろかった」と言ってもらえたのを覚えています。
結果としては、9クラス中、準優勝することが出来ました。優勝できなかったのは悔しかったですが、問題児が多いなかで一致団結して取り組めたことは10年以上たった今でも同級生と語れるネタになっています。
私が起業したのも戦うことから逃げ続けてきた結果です。
基本的に注意力のない私は何をやってもケアレスミスが多く、言われたことをキチンとやることが苦手です。
学校から保護者へ配布されるプリントは漏れなく全て無くしました。勉強では難しい問題は解けても、小問で必ずミスをしてました。大学時代もポンコツすぎて、アルバイトを2回クビになっています。
大学時代、将来に悩んでいました。ただ、普通にサラリーマンになって、同期の中で出世競争で勝ち抜いていくのは無理だと直感的に分かっていました。だから、何か人と違うことをしようと常に考えてました。
言われた作業をこなすのは苦手である一方で、先程の合唱コンクールのように自分の創意工夫で何かを作り上げることは人より得意でした。
これからゼロから何かを作り上げるのであればプログラミングが必須だと思い、独学で学び始めました。
私は大学4年時に、じげんという会社に第一期生として内定いただいてインターン生として働いていました。一度は、入社して修行しようと考えたのですが、社長の平尾さんが圧倒的すぎて「社長と同じ価値観で戦っても絶対に追いつけない」と思うようになりました。特に優秀ではないと自覚している私は、永遠に勝てないレースを走り続けるようなイメージをしてしまったのです。
そこで、思い切って自分で会社を起こすことにしました。
今月で起業してから6年、手痛い失敗も数え切れないほど経験しましたが、仕事が辛いと思ったことは一度もありません。誰かと比べられることもないですし、自分の弱みは仲間にフォローしてもらうことができます。
おそらく私は、どの会社に入社したとしても自分らしく働くのは難しかったのでしょう。会社の中で働くのは向いてなかったのです。
よく「学生時代に起業しましたね」と言われます。私としては、思い切ってリスクを取ったというよりも、勝てない戦いから逃げ続けてきただけです。
真っ向勝負を避ければ避けるほど人生は楽しくなっていきました。
勝てない戦いさえしなければ、自分でルールをつくれる場所か、勝てる場所を見つけることが出来るのです。
人生で「戦わない」ためにはどうしたらいいのか
人は本能的に他人と比較してしまう生き物です。そのため、集団の中で自分が価値を発揮できないと劣等感を感じます。
何でも出来る超人なら悩むことはないとは思いますが、ほとんどの方はそうではないと思います。
有限な人生の中では、出来る限り「戦いを避ける」ことが幸せに生きる秘訣ではないでしょうか。
戦わないために重要だと思うことを3つ挙げてみました。
①自分の価値観で生きる(他人の価値観を気にしない)
何が正しいのかは自分で決める。オンリーワンを目指す価値観を持つと戦いから降りることができます。
人生の選択で悩む場合は、ほとんど他人の価値観と自分の価値観との葛藤です。
例えば、みんなが大学に行くべきと思ってるから行くけど、本当は別にやりたいことがある、なんて人も多いのではないでしょうか。大学に行かなければならないというルールはないのに他人の常識が気になって自分の価値観を見失ってしまいます。
会社の経営者であれば、競合他社と売上を競うのは、他人と同じ価値観で生きることです。元々は人に勝つために会社を起こしたのではなく、お客さんに喜んで貰いたくて始めたはずです。競合他社と競うのではなく、自分の実現したい世界をどれだけ達成しているかだけを重視すべきです。
自分の価値観に従えば従うほど、そこには真似出来ない独自性が生まれ、戦いのない生き方に近づいていきます。
②自分の強みを活かす(自分の弱みが出ないことをする)
シンプルに自分が得意なことに時間を割きましょう。
得意なこととは、やっていたらあっという間に時間がたつような夢中になれることです。
夢中になれるのであれば、その時は他人より秀でてなくてもかまいません。時間が経てばすぐに上達していくでしょうか。
「苦手なことでも耐えてやり抜かなければならない」という考え方は捨てたほうが良いと思います。
人前で話すのが苦手だなと思ったら、裏側のサポートに徹したらいいのです。
③興味があることに勇気を出してやってみる(出来れば課金する)
よく自分の価値観や強みが分からないという人がいます。
そんな人にオススメなのが、なんとなくやってみたいなと思っていることをやってみることです。
「これはやりたい!」というものはなくても「何となくやってみたいな」と思うものはあるはずです。
人間は変化を嫌うので、新しいことをやろうとすると、すぐに「やらなくていい理由」を考えてしまいますが、そのときにちょっとだけ勇気を出してやってみると良いです。
私は大学3年生の頃、なんとなくプログラミングをやりたいと思った時に、思い切って友だちが誰もいない情報科に移動しました。いつも一緒にいた友人とは会えなくなりましたが、新しい世界が広がりました。
新しいことは、その面白さに気づく前にやめてしまうことも多いので、出来れば思い切ってスクールやモノにお金を払って引くに引けない状況を作るほうがよいです。
営業よりも技術職につきたいなと思うなら、思い切ってプログラミングスクールに行ってみる。
料理が上手くなりたいなと思うなら、料理教室に行ってみるなどです。
新しいことに挑戦する中で、自分の価値観や強みが見えてくるはずです。
まとめ
最後にお伝えしたかったことをまとめると、自分が勝てないと思う戦いは潔くやめて、自分が勝てる場所を探してみることも大事だよ!ということです。
ついどうやったら他人に勝てるかを考えてしまいますが、それより先にどうしたら戦わずに済むかを最優先で考えてみてはいかがでしょうか。