「成長できる環境」を求めてはいけない

■小さい人形は、ビーズやパーツなどを組み合わせて作成し、自身で着色したものです。

春になり、今の職場より成長できる環境を求めて転職や次のステップを考えている人は多いだろう。私も数多くの面接をさせていただくなかで何度も「成長できる環境に行きたい」という言葉を聞いてきた。

私は「成長できる環境」を求めるべきではないと考えている。

幸せに働くとは何なのか

面接では経験、スキル、人柄など複数の軸で求職者を評価させていただく。

中でも、私が一番大事にしていることは「この会社に入社してその人の人生は幸せになるのか?」というポイントだ。

従業員の幸福度と会社の生産性には比例関係があるという調査結果があるそうだ。社員が仕事に幸せを感じることができずに、長期的な大きな成果をあげることはできない。

(特に弊社は「すべての人が幸せに生きる世界をつくる」というビジョンを掲げているので、働く人が幸せでなければ、ビジョンの実現から遠ざかってしまう)

社員の幸せを考える上で、そもそも「幸せに働く」とは何なのかをはっきりさせる必要がある。

幸せな仕事とは、その仕事自体に意義を感じられること

イエール大学のエイミー准教授の研究によると、人の仕事の捉え方は「ジョブ」「キャリア」「コーリング」の3つカテゴリーがあるという。

①ジョブ(労働)
ジョブに属する人は仕事を単なる労働と考えている。働く動機は報酬。より良い報酬があればいつでも転職する。

②キャリア(成長の実感)
キャリアに属する人の働く動機は、「経歴」や「向上している」という実感。目の前の仕事をもっと良い何かへの踏み台と捉える。

③コーリング(仕事自体が価値)
コーリングに属する人の働く動機は「社会の役に立っている」「自分の仕事には意義がある」という実感。目の前の仕事に取り組むこと自体に価値を感じる。

3つのカテゴリーで、最も幸福度が高く集中力高く仕事に取り組めているのは③コーリングに属する人だそうだ。この研究結果には私の過去の経験を振り返っても強く共感できる。

私の経験では大学時代にコンビニでアルバイトしていたときはジョブだった。勤務中は早く時間が過ぎ去ってほしかった。

企業でインターンをしていたときはキャリアになった。より成長できる環境を求めた。チャレンジングな仕事だとやる気がでるが、成長できない作業だとモチベーションは落ちた。每日、何かに追われている状態だった。

今は会社を経営するようになりコーリングに属している。創業から5年間、仕事を休んだことは1日もないがツライと思ったことはない。目の前の仕事に取り組んでいる事自体が自分の人生にとって最高に価値あることに感じているからだ。

幸せに働ける仕事かどうかを判断するには、その仕事に心から意義を感じられるのか考える必要がある。

会社を選ぶときは中の社員が仕事をどのように捉えているかを見極める

仮に、求職者が会社の理念やビジョン、事業内容に共感できたとしても会社の中の社長や社員がコーリングに属しているとは限らない。

その場合、会社の意義に共感して入社しても、中の人と働く動機が違うので違和感を感じることになる。多くの場合は「価値観が合わない」という理由ですぐに退職にする。

理念、ビジョン、ミッションステートメントなどを明確に掲げている会社でも「事業拡大の手段」として、置いているだけになっている場合もある。

こういった会社では社長や社員が、会社の理念、ビジョンについて熱く語ることがない。

理念についても話をしたとしても「なぜその理念なのですか?」「なぜこの理念に共感していますか?」と深掘って質問すると、相手のテンションが下がっていくのですぐに分かる。

社長や社員が理念やビジョンよりも事業の成長性やビジネスモデル、この会社に入ることでいかに良いキャリアを積めるか、熱意を込めて話すことがある。これは社長や社員が目の前の仕事をキャリアだと捉えているケースだ。

熱意もなく淡々と話すだけなら仕事をジョブだと捉えている。会社を選ぶ選択肢がある状態なら、労働としか捉えていない社員がいる職場をあえて選ぶ必要はないだろう。

社長はコーリングに属していても社員はキャリアに属しているケースもある。もちろんその逆もある。

自分が仕事の意義に共感できるだけではなく、中の人が仕事をどのように捉えているかは見極めることが大切だ。

「成長出来る環境」を訴求する会社は多い

採用戦略として「成長できる環境」や「大きな仕事が出来ること」を訴求する会社は多い。
「この会社を踏み台として使ってくれて結構なので、成長したら独立してくれ」と言う会社すらある。

私は働く人の長期的な幸せを考えるのではあれば、「成長を訴求するのは一切やめたほうが良い」という考えを持っている。

目の前の仕事を踏み台として捉える働き方は、幸せな働き方ではないからだ。

なので、私は面接の場で成長を謳うことは一切しない。弊社は拡大期で優秀なメンバーが集まってきているし、人数もまだ少なく大きな裁量を渡せるのでビジネスマンとして能力を劇的に高められる環境ではある。

「今、この会社に入るとむちゃくちゃ成長できる」「良いキャリアを積める」というのは簡単だ。この言葉に刺さる人が多いことも理解している。それでも、一切そういった話はしない。全員がコーリングに属した状態で仕事してほしいからだ。

「キャリア」という考え方は捨てる

私は学生時代に人事業務を経験した。今は代表として最終面接を行っている。数多く面接をしてきた感覚値としては、求職者のうち8割以上の人が仕事をキャリアとして捉えているように感じる。

誤解のないように言うと、高みを目指して努力している人を否定するつもりはない。成長して高みを目指すのは良いことだ。少なくともただのジョブとして仕事を捉えるよりは遥かに日々が充実したものになる。

ただ、あまりにも「成長」だけに囚われすぎるのは問題だ。

私は、勇気を持って「キャリア」という考え方を捨て、コーリングに属して働ける天職を探すことをおすすめしたい。

なぜなら、成長に執着しても、上には上がいてキリがなく、今仕事をしているこの瞬間の幸せを感じることができないからだ。

自分自身の仕事への捉え方がキャリアに属すると感じる方は、これまでの自分を振り返って見てほしい。

成長を求めて働く人は終わりのない短距離走を繰り返しているようなものだ。常に「もっと成長しないと」「結果を出さないと」という脅迫観念に囚われる。数字に追われて焦ったり、他人と比べて劣等感を感じたりする人も多い。

その結果、周りが見えず利己的な行動をとるようになる。
私もインターンやプログラミングに没頭していた大学時代はそうだった。家族、友人など大切な人たちの声が頭に入らなくなった。当然、関係も疎遠になった。年月がたった今でも、あのとき周りにいた大切な人たちにもっと目を向けるべきだったと反省している。

30〜40代で社会人歴が長い人でも、周囲からの評価が気になって仕方がないという人がいる。飲みの席などで、今や未来の話ではなく、自分の過去の苦労話や武勇伝ばかり話す人にはこういった人が多い。

あまりにも成長に囚われたまま年を取ると、自分が何者にもなれなかったことへの絶望したり、自己正当化のために批判的な態度をとる人間になるのかもしれない。

心から意義を感じられる仕事を見つけよう

人生の目的は「成長する」ことではない。目的があるとすれば幸せに生きること。成長よりも今この瞬間をいかに幸せを感じて生きるか、それを生涯に渡って続けられるかのほうがよほど大切だ。

そのためには、心からやりがいを感じられる天職を見つける必要がある。

「努力は夢中に勝てない」という言葉がある。本当に仕事に意義を感じているなら自ずとスキルも向上していき生産性の高い人材になるだろう。

自分の仕事に誇りを持つことが出来れば、劣等感に苛まれることもない。心に余裕が生まれ職場の仲間や家族、友人、恋人をより大切にすることができる。

もし、見つからないなら探し続けよう。幸せに働ける仕事を見つけることに妥協してはいけない。

仕事に費やす時間は人生の中でもとても大きなものだから、満足いく人生を送りたいなら「これだ!」って思える仕事をしなきゃいけない。そして、そうなるためには自分が本当に好きなことをやらなきゃいけない。まだそれが見つかってないなら、探し続けよう。止まってはいけない。

Steve Jobs


今の仕事は自分にとって天職だと一変の曇りもなく言えるだろうか。

成長できる環境なんて求めなくていい。その代わり心から意義を感じられる仕事を見つけよう。今の仕事の捉え方を変えるだけで天職になるかもしれないし、今とはまったく別の仕事かもしれない。

最後に、人生で大切なことを教えてくれる話をひとつ紹介する。オーストラリアのホスピスで働く看護師が余命数週間の患者に「人生で一番後悔していることはなんですか?」と問いかけた。

多かった答えが次の5つだ。

「あんなに働かなければ良かった」
「人の期待に応えるのではなく、自分に正直にいきる勇気が欲しかった」
「勇気をだして自分の気持ちを伝えれば良かった」
「友だちと付き合い続ければよかった」
「自分が幸せになるのを許せば良かった」

自分の仕事に心からやりがいを感じて、幸せに働く人が一人でも増えることを願っている。

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